なっていない。32枚すべてが対馬を日本と描いている——韓国自身の視点版を含めて。 かわりに、日本と韓国の地図が本当に重なっていた場所が150km 東にある。竹島/独島だ。 同じやり方で世界中を総当たりしたところ、2国の「自国」が物理的に重なる場所は17か所あった——ただしこれは総数ではなく下限で、 その理由は官製地図と照合した節にある。
31か国の視点版地図から「その国が自国と描いている領域」を取り出し、465通りの組み合わせで交差させた。 面積 0.01km² 以上で重なったのが下の17か所。円をクリックすると下の閲覧画面に移動する。
左で場所を選ぶ。右にはその範囲を各国の地図がどう描いているかが並ぶ。 斜線の向きが国ごとに違うので、最後の「重ねる」面では、両方が自国と主張する領域だけが格子模様になる。
代表点を1つ決め、32枚それぞれに「ここはどの国か」を尋ねた。 同じ場所が何通りに割れたかが「割れ」の欄。赤い札は1枚だけが違うことを言っていることを示す。 点線の札は、その地図がそこをどの国にも塗っていない(空白のまま残している)という意味。
ここまでが読んでいるのは各国の官製地図ではない。Natural Earth という民間データによる再現である。 実際の政府見解・法令と突き合わせると、ずれの向きがはっきりしている。
取りこぼし1か国に絞って総当たりすると、この偏りが具体的に見える。日本の陸地の重なりは 南千島 4,930km²(対ロシア)、尖閣 3.75km²(対中国・台湾)、竹島 0.03km²(対韓国)の 3か所で、下の5通りを通しても増えなかった。
それでも写っていないものが4つある。すべて海か、視点版そのものの欠落である。
向きは一方に偏っている。検出した17件はいずれも実在の係争に対応していて、架空の重なりは1件も無かった。 一方で取りこぼしは少なくとも5件あり、そのうち最大の1件(南極、陸965,000km²)だけで、 検出した2位以下16件の合計 470,584km² の2倍を超える。
つまりこの17件は総数ではなく下限である。「重なりが無い」を「争いが無い」と読んではいけない。 使い道は、当たりを付ける検出器としてであって、係争地の台帳としてではない。
冒頭の対馬の結論が保つのは、Natural Earth が正しいからではない。 韓国政府の実際の立場を別に確認したからである——1949年に李承晩大統領が言及したものの、 1965年の日韓基本条約に至る過程で取り下げられ、現在どちらの政府も公式には主張していない。 32枚が一致したことは、その裏付けであって根拠ではない。
前節で「海の主張は構造的に写らない」と書いた。データセットを替えれば測れる。 Marine Regions(フランダース海洋研究所)の Maritime Boundaries v12 は、EEZ のレイヤの中に 重複主張と共同管理区域を独立した地物として持っている。陸と同じ問いを、そのまま海に投げられる。
EEZ は「その国の海」ではない。領土といえるのは領海までで、EEZ は主権ではなく 資源についての主権的権利が及ぶ範囲である。ここが最も混同されやすい。
海の重複主張は 35か所・合計 4,270,170km²、これとは別に、線を引けずに共同管理としている区域が 21か所・合計 377,046km² ある。陸の17か所(9,955,397km²)は中国・台湾の1件で9,484,814km² を占めるので、 それを除いた 470,584km² と比べると、海の係争は陸のおよそ9倍の広さになる。
陸で見つかった3か所は、海でも同じ3か所が立っている。ただし桁が違う。 (陸は各国が公表する実面積。Natural Earth の簡略化ジオメトリではない。)
国が小さな岩を争うのは岩が欲しいからではない、という一般論は、この比で具体的な数になる。 なお日韓には、線を引けずに共同開発区域とした 82,610km² がある——陸に対応物を持たない、海だけの重なりである。
海域データ: Flanders Marine Institute (2023). Maritime Boundaries Geodatabase, version 12 (MarineRegions.org、CC BY 4.0、科学・教育・研究目的)。 境界は法的拘束力を持つものではなく、同研究所による整理である。取得日 2026-08-30。 なお沖ノ鳥島は、このデータでは重複主張として立っていない(日本の EEZ に含めて描かれている)。
同じ調べを小学校中学年向けに書き直した版もある——地図をかさねてみたら。 色紙を重ねる見立てで、青と黄をかさねると緑になる、という形にしてある。
Natural Earth 5.1.1 の 10m Admin 0 – Countries, point-of-view 一式。 アルゼンチン、バングラデシュ、ブラジル、中国、ドイツ、エジプト、スペイン、フランス、イギリス、ギリシャ、 インドネシア、インド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、モロッコ、ネパール、オランダ、パキスタン、 ポーランド、ポルトガル、パレスチナ、ロシア、サウジアラビア、スウェーデン、トルコ、台湾、ウクライナ、 アメリカ、ベトナムの31視点+ISO中立版の計32枚。
各視点版から SOVEREIGNT がその国自身の面をすべて結合して「自国の主張」とし、 31か国の総当たり465組で交差を取った。面積は等積図法(ESRI:54034)で測り、 0.01km² 未満は捨てた。竹島/独島の 0.03km² が下限すれすれで残っている。
Natural Earth は民間のデータセットで、各視点版は「その国はこう描くだろう」という第三者の再現にすぎない。 日本政府や韓国政府が発行した地図そのものではない。実際にどれだけ食い違うかは前節で測った。 配信日は2022年5月13日で、それ以降の変更(ロシアの4州併合宣言など)は入っていない。